競馬を始めたばかりの方々の中には、「複勝ころがし」という手法に興味を持たれる方も多いでしょう。
各種メディアで挑戦していることも多く、低リスクで大きな払い戻しにチャレンジできそうな複勝ころがしですが、実際には注意すべき点がいくつか存在します。
本記事では、複勝ころがしの仕組みやリスク、そしてその活用方法について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
「複勝」と「複勝ころがし」について
まず、そもそも複勝馬券についてですが、1着から3着までに入れば的中となるため、他の馬券種よりも的中しやすいとされています。そのため初心者の方にも人気がある馬券のひとつです。
では「複勝ころがし」とはどのような馬券術なのでしょうか。
これは、複勝馬券で得た配当金を次のレースの複勝馬券に全額再投資し、これを繰り返すことで資金を増やしていく方法です。例えば、最初に1,000円を賭け、1.5倍のオッズで的中すれば1,500円になります。次のレースでこの1,500円を再び複勝に賭け、的中すればさらに増加します。このように、雪だるま式に資金を増やしていくことから「ころがし」と呼ばれています。
複勝ころがしのリスク:控除率と回数の影響
しかし、複勝ころがしには見落としがちなリスクが存在します。その一つが「控除率」です。控除率とは、賭け金から主催者が差し引く手数料のようなもので、JRAの複勝の控除率は20%です。つまり賭けた金額のうち、80%しか配当に回らないのです。
さらに、ころがしを続けることで賭ける回数が増え、その都度控除率の影響を受けるため、最終的なリターンが減少します。なので複勝ころがしと複勝1発勝負の場合、最終的に賭ける金額が同じでも、払っている手数料の額は複勝ころがしの方が多くなってしまうのです。

複勝ころがしの活用法:「エンターテインメント」と「練習手段」
では複勝ころがしは全く意味がないのでしょうか。
いえ、一概にそうとは言い切れません。まず1つ目はエンターテインメントとしての側面です。
各種メディアの企画でも採用されているように、チャレンジしている側も見ている側もなかなか楽しめます。「1コロ目でハズレかよ!」「4コロ目成功したスゲー!」といったように仲間とワイワイ盛り上がるための馬券としてはオススメのひとつです。


そして2つ目は、トレーニングとしての側面です。
一度の不的中で積み上げた資金がすべて失われるという緊張感は、予想力を鍛える良いトレーニングになります。またどのレースに賭けるかを真剣に考えることで、レース選びの選定力も向上します。
ただし、実際の収益を目的とする場合、複勝ころがしはリスクが高いため、他の馬券戦略を検討することをおすすめします。例えば、的中率と回収率のバランスを考慮した馬券の購入や、資金管理を徹底することで、より安定した収益を目指すことができます。
複勝ころがしはあくまで「エンタメ」「練習」
複勝ころがしは、一見すると手堅く資金を増やせる方法のように思えますが、控除率や1回のハズレでプラスがすべてなくなるというリスクが伴います。エンターテインメントとして楽しむ、または練習として極少額で賭けるには良いかもしれませんが、実際の収益を目的とする場合は慎重な検討が必要です。
馬券で長期的に勝つためには、自分に合った馬券戦略を見つけて計画的に馬券を購入することが大切です。
いくら高い予想力とレース選定力をもっていたとしても、複勝的中率は約80%が実質的な上限と私は考えます。
(複勝1.0~1.1倍のような断然人気馬を購入すればもう少し的中率は上がるかもしれません。ですが、期待値から考えると、1.1倍のオッズの馬を買って長期的にプラス収支にするには、91%以上の的中率が必要ですので、現実的ではありません)
競馬は馬と騎手いう生き物によるレースであり、複数頭数が一緒に走る競技です。しかも屋外で実施されるので天候の影響も受けます。なので「展開のアヤ」や「想定外のアンラッキー」が必ずあります。
過去にトップジョッキーは敗戦の理由にこんな発言をしたことがありました。
岡部幸雄騎手は「風が強かったため馬のテンションが上がった」と言い、福永祐一騎手は「直線で馬が西日を気にしていた」と語りました。
それらが敗因のすべてではありませんが、実際に騎乗した一流ジョッキーですらこのような言い訳(?)をしていまうぐらい不可解な敗戦(または騎乗ミス)が存在する証左ではあります。
これがどんなに予想家が努力しても的中率が100%にはならない理由であり、我々一般人の努力の限界は的中率80%前後にあると考える所以です。
なので、複勝ですらどんなに努力しても5回に1回はハズれるいう前提で、それに見合ったオッズで馬券を買う戦略を推奨しているのです。
勝負馬券とエンタメ・練習馬券をしっかり分けて、毎週の競馬を楽しんでいきましょう。