競馬のコースは例え同じ距離であっても競馬場ごとに異なる「流れのクセ」が存在します。
コースの起伏やカーブの角度、直線の長さがレース展開に大きな影響を与え、活躍する馬のタイプがガラリと変わってきます。そのため「どのような馬が今回のコースで求められているのか」を理解するのが全ての予想の土台、予想の第一歩と言っても過言ではありません。
ぜひレースを予想する前に一度コースの特性を振り返るクセをつけましょう!
今回は解説するのは東京芝2000m。
天皇賞(秋)がおこなわれる中距離の王道コースの地形的特徴と、その傾向に合致して好走する馬のタイプとその選び方を紹介します。
週末のメインレースを読み解くヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
コースの特性

スタート地点は1コーナー奥のポケット。
スタート後、約100m進んだところに左へ曲がる大きなカーブがある。
向正面の長い直線を走り、3コーナー手前にさしかかるところで緩い上り坂。3~4コーナーにかけては下り坂になっている。
最後の直線に入ると、途中からなだらかな上り坂(高低差2.1m)。東京競馬場全体の高低差は2.7mある。
最後の直線距離は525.9mで、新潟の外回りコースに次ぐ長さ。
仮柵によるコース設定はA、B、C、Dの4パターン。3mごとに幅員が異なる。例年、Dコースは1~2月に使用され、芝内側部分を保護している。2コーナーのカーブが大きな鬼門となるコース。スタート直後は馬群がかたまり気味になってしまうので、多頭数の大外枠は距離ロスを強いられることになり、非常に厳しい。
向正面の直線に入ってもペースがあまり上がらないため、基本的にはスローの展開が多くなり、最後は決め手が問われる。JRA-VAN データ解説 より
コース特性とそこから導き出される好走特徴
2000m専用のスタートから約100mで最初のコーナーかつ3コーナー手前に坂があるので基本ペースはあがりにくいです。また最初のコーナーが近すぎることから外枠不利・内枠有利の印象が強いですが、道中のペースがあがりにくく、結局長い直線での決め脚比べになるので案外枠による差はありません。
そしてその決め脚比べは重要なので、速い上りが使えることが好走の条件。とは言え4コーナーをあまりにも後方で回っていては物理的に届きません。なぜなら決め脚比べになるコースは前の馬もある程度の末脚を使えてしまうからです。
なので前過ぎず、後ろ過ぎずの好位につけられるある程度のテンの早さと最後の決め手が重要です。
また東京競馬場の芝の状態は一年を通して良好。雨が降った場合は、馬場の外から乾く傾向があるので、そうなると外を選んだ馬が有利に。
この傾向から見えてくるのは、以下のようなポイントです。
- コース構造による有利不利は特になし
- 年間を通して芝の状態は良好
- ほとんどの場合は最後の直線での時計比べになる
- だからこそある程度の好位につけられる追走力は重要
人気馬にとってコース自体に枠順による極端な有利・不利が少ないことも特筆すべきポイントです)。内枠・外枠だからといって割引する必要は少なく、人気馬がしっかり力を発揮しやすい舞台と言えます。
ただし勝率に限っていえばやはり最内枠の好走率は高い。また20倍~50倍未満の中穴馬の1枠好走率も総合的に高いのでその点は忘れないようにしたいですね。
枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1枠 | 24- 13- 17- 56/110 | 21.8% | 33.6% | 49.1% |
2枠 | 17- 17- 16- 61/111 | 15.3% | 30.6% | 45.0% |
3枠 | 24- 16- 15- 53/108 | 22.2% | 37.0% | 50.9% |
4枠 | 21- 24- 11- 78/134 | 15.7% | 33.6% | 41.8% |
5枠 | 26- 41- 21- 65/153 | 17.0% | 43.8% | 57.5% |
6枠 | 23- 23- 20- 66/132 | 17.4% | 34.8% | 50.0% |
7枠 | 28- 17- 27- 86/158 | 17.7% | 28.5% | 45.6% |
8枠 | 27- 29- 32- 86/174 | 15.5% | 32.2% | 50.6% |
限定条件:[簡易絞り込み:1~5番人気 のみ]
人気馬の枠による偏りはほとんどなく、勝率に限れば1枠・3枠が少し高い傾向です。
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1枠 | 3- 3- 3-39/48 | 6.3% | 12.5% | 18.8% |
2枠 | 0- 2- 2-45/49 | 0.0% | 4.1% | 8.2% |
3枠 | 0- 1- 6-53/60 | 0.0% | 1.7% | 11.7% |
4枠 | 1- 5- 4-38/48 | 2.1% | 12.5% | 20.8% |
5枠 | 0- 0- 6-51/57 | 0.0% | 0.0% | 10.5% |
6枠 | 1- 4- 5-45/55 | 1.8% | 9.1% | 18.2% |
7枠 | 2- 3- 3-63/71 | 2.8% | 7.0% | 11.3% |
8枠 | 2- 3- 3-51/59 | 3.4% | 8.5% | 13.6% |
限定条件:[単勝オッズ20.0倍~49.9倍 のみ]
中穴を狙うなら1枠が絶好。枠を利して実力差を補うという意味では、1枠バイアスはあると言えるかもしれません。ただ隣の2枠は良くなく、連対率でみると外の6枠~8枠に良績が集まることを考えれば、やはり枠バイアスはフラットというのが基本でしょう。
本命にするべき候補馬のイメージ
(距離変更馬なら上がりタイムがなくても要検討)
好位~中団で折り合える馬
延長馬が多い場合は、上り3F実績馬をさらに重視
※テン3Fタイムはスマート出馬表(無料)で確認できます
同コースの好走例
ダノンエアズロック

2024年プリンシパルステークス 1番人気1着
テン3Fの早さが出走馬中5位。実際にレースも道中5番手前後で進み、最後は上がり3位の末脚で1着。
先入観をもたず、コース特性を知っていれば8枠が不安材料でないことも確信できますね。
ちなみに同レース2着はテン3Fの早さが出走馬中4位のメリオーレム。距離短縮馬は上がりの早さをあまり考慮しなくてOK。同様の特徴で好走した馬には2024年天皇賞(秋)2着のタスティエーラが該当。
マイネルケレリウス

2024年府中市市政施行70周年記念 10人気1着
テン3Fの早さが出走馬中6位、上りタイム順位5位。10番人気ながらも要検討対象。ちなみに2着はテン3F順位7位のトーセンリョウ。最悪アスクドゥポルテ、ダノンザタイガーもまとめて4頭ボックス買いでも十分な馬連万馬券決着。
東京芝2000mはフラットな上り勝負の舞台
東京芝2000mは特殊なスタート位置に関わらず、構造上ペースが落ち着く傾向があるため、データ的にも枠順の有利不利がないコースでした。そして道中ペースが緩む分、最後の直線での上り勝負になりがちです。
しかしいくら東京の最後の直線が長く、上がり3Fの持ちタイムが優秀であっても、良好な芝での瞬発力勝負で最後方一気は余程の実力差があっても難しいものです。
そのため前過ぎず、後ろ過ぎない好位置で脚をためられる馬が本命馬候補になるでしょう。
「コースの物理的構造と、そこから導き出されるレース傾向」が分かればおのずと「このコースで買うべき馬の特徴」がハッキリします。
そうすることで、この「特徴」に合致している馬が今回のレースにいるかどうかをチェックすることができます。人気馬(=実績馬)の特徴がレース傾向に合致しなければ評価を下げ、穴馬(=低実績)の特徴が傾向に合致していれば評価を上げる。この2頭を比べてどちらを本命にするか─ここまできてやっと「予想」と言える段階と言えます。
まさにコースを理解することは予想の土台であり予想の第一歩なのです。
このコース考察が、あなたの予想のヒントとなれば幸いです。