競馬のコースは例え同じ距離であっても競馬場ごとに異なる「流れのクセ」が存在します。
コースの起伏やカーブの角度、直線の長さがレース展開に大きな影響を与え、活躍する馬のタイプがガラリと変わってきます。そのため「どのような馬が今回のコースで求められているのか」を理解するのが全ての予想の土台、予想の第一歩と言っても過言ではありません。
ぜひレースを予想する前に一度コースの特性を振り返るクセをつけましょう!
今回は解説するのは東京芝2400m。
ダービー・オークス、ジャパンカップがおこなわれる日本を代表するチャンピオンコースの地形的特徴と、その傾向に合致して好走する馬のタイプとその選び方を紹介します。
週末のメインレースを読み解くヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
コースの特性

スタートは正面スタンド前直線から。
スタート後、平坦のホームストレッチを走り、ゴール板を一度通過。そこからグルリとコースを一周する。
最初の1コーナーまでの距離は約350m(Aコース時)。
1コーナーから2コーナーにかけてはほぼ平坦。
約450mある長いバックストレッチを通り、3コーナー手前にさしかかるところで緩い上り坂。
3~4コーナーにかけては下り坂になっている。
最後の直線に入ると、途中からなだらかな上り坂(高低差2.1m)。
東京競馬場全体の高低差は2.7mある。最後の直線距離は525.9mで、新潟の外回りコースに次ぐ長さ。
スタート直後は先行争いがあるため少し流れるが、1~2コーナーに入れば落ち着く。全体的にはスローペースで、最後の直線勝負が基本。JRA-VAN データ解説 より
コース特性とそこからイメージされる好走馬
スタートからほぼ平坦で、なおかつゆったりとした角度のコーナーをまわる。ちょうど半周した3コーナーの手前で坂をむかえるので道中で極端なペースアップは発生しにくく、スローペースになりがち。
そして最後の直線の坂を登ってからは約300mの平坦。そうなると最後は当然瞬発力戦になります。
また東京競馬場の芝の状態は一年を通して良好(雨が降った場合は、馬場の外から乾く傾向があるので、そうなると外を選んだ馬が有利に)。
スローペース&ラスト平坦&芝の状態が良いとなると、ある程度好位で直線に臨めないと物理的に差し届かないケースが多くなります。
この傾向から見えてくるのは、以下のようなポイントです。
- コース構造による有利不利は特になし
- 年間を通して芝の状態は良好
- ほとんどの場合は最後の直線での時計比べになる
- だからこそある程度の好位につけられる追走力は重要
開催前半やBコース・Cコース替わりで特に馬場状態が良いときは、むしろテン3Fの早さの方を重視するべきですらあると考えます。
※テン3Fタイムはスマート出馬表(無料)で確認できます
枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1枠 | 17- 16- 5- 42/ 80 | 21.3% | 41.3% | 47.5% |
2枠 | 11- 7- 13- 45/ 76 | 14.5% | 23.7% | 40.8% |
3枠 | 17- 15- 17- 43/ 92 | 18.5% | 34.8% | 53.3% |
4枠 | 13- 14- 13- 35/ 75 | 17.3% | 36.0% | 53.3% |
5枠 | 20- 22- 7- 65/114 | 17.5% | 36.8% | 43.0% |
6枠 | 21- 23- 7- 52/103 | 20.4% | 42.7% | 49.5% |
7枠 | 17- 15- 24- 69/125 | 13.6% | 25.6% | 44.8% |
8枠 | 21- 18- 17- 54/110 | 19.1% | 35.5% | 50.9% |
人気馬の成績は枠ごとに大きな偏りはなく、おおむねフラット。ただし2枠が悪い感があります。2枠の複勝率が8枠より10%低いというのは気になるところです。ほか両端の1枠・8枠が良く、7枠が若干見劣るというぐらい。
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|
1枠 | 2- 2- 1-42/47 | 4.3% | 8.5% | 10.6% |
2枠 | 1- 2- 2-33/38 | 2.6% | 7.9% | 13.2% |
3枠 | 2- 2- 1-36/41 | 4.9% | 9.8% | 12.2% |
4枠 | 0- 1- 6-41/48 | 0.0% | 2.1% | 14.6% |
5枠 | 1- 4- 4-34/43 | 2.3% | 11.6% | 20.9% |
6枠 | 2- 1- 2-41/46 | 4.3% | 6.5% | 10.9% |
7枠 | 1- 1- 4-52/58 | 1.7% | 3.4% | 10.3% |
8枠 | 1- 4- 4-53/62 | 1.6% | 8.1% | 14.5% |
限定条件:[単勝オッズ20.0倍~49.9倍 のみ]
中穴馬も枠でみるとおおむねフラットですが、こちらは悪い枠というより、良い枠で目立つのが5枠。このオッズで複勝率20.9%、5回に1回は馬券になると思えば複勝5倍以上なら期待値を超えますね。
本命にするべき候補馬のイメージ
同時に平均以上のテン3F持ちタイムがある馬
同コースの好走例
東京競馬場の芝2400mで好走するパターンに合致する馬を一例としてあげます。
チェルヴィニア

2024年オークス 2番人気1着
テン3Fが出走馬中8位の早さで上りは3位。道中10番手前後の中盤を進み、最後の直線で一気に差し切りました。
同じくテン3Fが出走馬中8位の早さで上りは3位だったステレンボッシュが2着。
テン3Fが出走馬中7位の早さで上りは5位と上記2頭とほぼ同値だったクイーンズウォークはクビ差の4着となり、これは悔しい結果。
シンエンペラー

2024年日本ダービー 7番人気3着
テン3Fが出走馬中8位の早さで上りは15位。Cコース替わり1週目にあたり馬場状態が特に良い中でおこなわれたダービーだったので、上りタイムよりもテン3Fの早さにより注目しなくてはならないレースでした。
そういう意味では、テン3Fが出走馬中2位の早さで上りは1位のジャスティンミラノ(1番人気2着)は鉄板軸と言えますが、よりテンの重要さが分かりやすい事例としてシンエンペラーをピックアップしました。
テン3Fがほぼ同値のダノンエアズロック、シュガークンが馬券外となったのは残念ですが、皐月賞組とダービートライアル組の力の差がでたと考えるべきでしょうか。
17頭から4頭まで絞ってここからどの馬を選ぶのか?ジャスティンミラノ、シンエンペラー、ダノンエアズロック、シュガークンからどう馬券を組み立てるのか?
ここからが予想であり、馬券力が問われるところですが、ここまで絞れていればかなり勝ちに近づいているはずです。
東京芝2400mはテンの早さが意外と重要
日本一広い競馬場、GⅠの舞台で直線一気を決める一流馬というイメージから差し有利と思いがちですが、それは半分正解で半分間違いというのが東京芝2400mというコースです。
上がり3Fタイムが優秀だとしても、毎回道中最後方待機になってしまう馬には注意が必要です。
ある程度のテンの早さと上がりの早さを両立できるタイプこそがこのコースで勝負すべき馬なのです。
「コースの物理的構造と、そこから導き出されるレース傾向」が分かればおのずと「このコースで買うべき馬の特徴」がハッキリします。
そうすることで、この「特徴」に合致している馬が今回のレースにいるかどうかをチェックすることができます。人気馬(=実績馬)の特徴がレース傾向に合致しなければ評価を下げ、穴馬(=低実績)の特徴が傾向に合致していれば評価を上げる。この2頭を比べてどちらを本命にするか─ここまできてやっと「予想」と言える段階と言えます。
まさにコースを理解することは予想の土台であり予想の第一歩なのです。
このコース考察が、あなたの予想のヒントとなれば幸いです。